専門誌『企業実務』掲載事例から考える/問い文化 × 職場コミュニケーション

「コミュニケーションしましょう」ではなく、
話しかけるきっかけを置く。

毎日じゃなくてもいい。ときどき、誰かを思い浮かべる問いがある。その一言の声かけ、共有、相談、感謝が、職場を少しずつ変えていく。

問いは、人と人の間に小さな接点を生むマイクロインターベンション。

左:黙々と仕事をする、隣にいても話さない、部署同士に壁がある、困っている人がいても気づかれないなど、少し離れて働く人たちの様子。中央:「今日、一人に声をかけるなら誰?」という問いに触れ、一人の社員が誰かを思い浮かべる様子。右:一言声をかける、共有する、感謝する、聞く、助ける、相談するという小さな接点が生まれる様子を示す3段階の図解

「コミュニケーションしましょう」では、人は動きにくい

抽象的な呼びかけではなく、”一人だけ思い浮かべる問い”を置く。

もっとコミュニケーションを取りましょう。と言われても、何をすればよいか分からない。でも、今日、一人に声をかけるなら誰?と問われると、誰か一人を思い浮かべる。さらに、今日、先に共有しておいた方がいいことは?と問われれば、具体的な出来事を思い浮かべる。

問いは、抽象的な「コミュニケーション」を、今日できる小さな行動へ変換する。

コミュニケーションの問いは、「たまにある」くらいでもいい。毎朝、毎晩、毎日必ず問い続ける必要はありません。むしろ、「今日は、人との関係を少し意識してみよう」という日が、ときどきある。それだけでも、最近話していない人・助けてもらった人・少し気になる人・共有しておきたいこと・感謝したい相手などを思い出すきっかけになります。

問い文化は、同じテーマを毎日押し続けることではない。必要なテーマを、必要なタイミングでふっと意識に上げること。

会話がないから問題なのではなく、必要なときに人とつながれていないことが問題かもしれない。

  • 忙しそうなので声をかけない
  • 小さな相談を後回しにする
  • 必要な情報を自分だけで持つ
  • 感謝していても言わない
  • 部署が違うと話さない
  • 上司と部下の会話が進捗確認だけ
  • 困っている人に気づいても「大丈夫だろう」と思う
  • 相手の状況を知らないまま仕事を進める

コミュニケーション不足は、単なる会話量ではなく、必要な接点が生まれていないこと。

「話した方がいい」と「実際に声をかける」の間には、キャズムがある。

共有した方がいい→相談した方がいい→感謝も伝えたい、の先にある「コミュニケーションのキャズム(『話した方がいい』と『実際に声をかける』の間)」を経て、でも→忙しい→あとでいい→わざわざ言うほどでもない→結局、声をかけない、へとつながる9段階の図解

人間関係を良くしたくないわけではない。行動を始める”最初の一歩”が抜けている。

コミュニケーションを増やすのではなく、一人との小さな接点をつくる。

声かけ

今日、一人に声をかけるなら誰?

共有

今日、先に共有しておいた方がいいことは?

相談

今、誰かに相談しておいた方がいいことは?

感謝

今日、誰かに一つ感謝を伝えるなら?

傾聴

今日、誰の話をもう一歩聞く?

関係性

最近、話せていない人は?

助け合い

今日、誰かを少し助けられることは?

配慮

今日、少し気にかけたい人は?

行動の前に、まず誰かや何かに気づく。

コミュニケーションの問いは、単に「話してください」と促すだけではありません。例えば、最近、話せていない人は?と問われると、まず、「そういえば、あの人と最近話していないな」という気づきが起きる。その気づきが、次の行動の入口になります。

声をかける→ 話を聞く→ 共有する→ 関係が少しつながる

問いの最初の役割は、人を動かすことではなく、見えていなかった人や関係性を意識に上げること。

人がいても、つながっていなければ、組織の力は出にくい。

コミュニケーションは、仲良くするためのものだけでなく、人が持っている知識・経験・情報・能力・支援をつなぐためのものでもあります。

  • 一人が知っている情報が共有される
  • 一人の困りごとに誰かの知識がつながる
  • 他部署の経験が活かされる
  • 早めの相談で手戻りが減る
  • 声かけで孤立が減る
  • 感謝が次の協力につながる

コミュニケーションが円滑でない職場は、人が持っている力を十分につなげられていない職場でもある。問いによるコミュニケーション促進は、職場をよりリソースフルにすることにつながる。

一つの問いが、一つの接点を生む。

7秒の問い→ 一人を思い浮かべる→ 一言声をかける→ 一つ共有する→ 少し話す→ 一つ気づく→ 次の行動につながる

問いがコミュニケーションを直接良くするのではない。問いが、人と人の小さな接点を生む。その小さな接点が少しずつ積み重なる。

たくさん話せばいいわけではない。

問い文化で増やしたいのは、次のような接点です。

  • 必要な共有
  • 少し早めの相談
  • 小さな感謝
  • 一言の声かけ
  • 相手を知る質問
  • 困る前の助け合い
  • 仕事を進めるための確認

コミュニケーションの量を増やすより、必要なところで良い接点が生まれることを大切にする。

管理職のコミュニケーションも、問いで少し変えられる。

今日、一人に声をかけるなら誰?
最近、話せていないメンバーは?
今日、一人の話をもう少し聞くなら?
誰かの良い仕事に気づいた?
今日、感謝を伝えるなら誰?
少し気になっているメンバーは?

管理職に「もっと部下とコミュニケーションを」と言うだけでなく、今日一人を思い浮かべるきっかけを置く。

誰かを少し意識することが、職場の日常になる。

問い文化がない職場

目の前の仕事
↓
自分の仕事
↓
また次の仕事

問い文化がある職場

問い
↓
誰かを思い出す
↓
周囲を見る
↓
一言動く

問い文化とは、毎日ずっと話し続ける職場ではない。必要なときに、人や周囲へ意識を向けられる職場。

問いは、会話のテーマにもなる。

誰かが、「今日、チームで一つ良くするとしたら?」という問いをつくる。別の人が答える。また別の人が、「最近、助かったことは?」という問いをつくる。すると、問いそのものが、人と人の間に共有テーマをつくる。

問い文化では、問いを出すことも、答えることも、人と人をつなぐ小さなコミュニケーションになる。

実際の企業では、どんな変化が見られたのか

専門誌『企業実務』掲載事例では、次のような変化が紹介されています。

  • コミュニケーションや連携がよくなった
  • 自主性・積極性が高まった
  • 職場課題を自然に考えるようになった
  • 改善を考えるようになった
  • 提案力が高まった
  • 業務推進力が高まった
  • セルフマネジメント力が高まった
  • 能力を発揮しやすくなった

コミュニケーションが良くなったことで、各自の力や情報がつながりやすくなった可能性がありますが、単純な因果関係として断定するものではありません。

話さない人が悪い、とは限らない。

コミュニケーションを妨げるものには、次のようなものがあります。

  • 忙しさ
  • 部署間の壁
  • 上下関係
  • 心理的安全性
  • 業務分断
  • 情報共有の仕組み
  • 物理的な距離
  • リモート勤務
  • 過度な縦割り
  • 管理職の関わり

問いは、話しにくい職場環境を放置して「もっと話せ」と求める道具ではありません。構造的な問題がある場合は、それも整える必要があります。

「話してください」ではなく、話したくなる・思い出したくなる問いを設計する。

問いナッジでは、次のようなことまで設計します。

誰を意識してほしいか
声かけか共有か相談か
朝か夜か
毎日必要なのか
ときどき入れる方がよいのか
答えやすいか
人間関係に踏み込みすぎないか
感情的に重すぎないか
小さな行動につながるか
管理感が強くないか

問い文化=必要なときに、人や周囲へ意識を向けられる職場

問いナッジ=その小さな接点を生む問いを設計する方法

実装方法

スコキン

朝・夜の問いの中に、ときどき声かけ・共有・感謝・相談等のテーマを入れる。

問いステーション

職場や部署に合わせて、人やチームを少し意識する問いを置く。

セミナッジ

コミュニケーション研修、1on1研修、管理職研修などで学んだことを、日常の小さな接点へ翻訳して届ける。

毎日コミュニケーションを問うことが目的ではない。職場の状態に合わせ、適切なタイミングで人への意識を少し起動する。

コミュニケーション不足にも、いろいろある。

共有不足

今日、先に共有しておくことは?

相談遅延

今、誰かに相談しておいた方がいいことは?

部署間連携

今日、別の部署に一つ確認するとしたら?

若手の孤立

最近、話せていない人は?

上司部下

今日、一人の話をもう少し聞くなら?

感謝不足

今日、誰かに一つ感謝を伝えるなら?

助け合い不足

今日、誰かを少し助けられることは?

御社では、どんな人と人の接点が足りていないのか。どんな問いなら、その一歩が自然に生まれるのか。

こんな企業に向いている

  • 社員同士の会話が少ない
  • 情報共有が遅い
  • 相談が後手になる
  • 部署間の連携が弱い
  • 若手が孤立しやすい
  • 管理職と部下の距離がある
  • 感謝や承認が少ない
  • 「もっとコミュニケーションを」と言っても変わらない
  • チームで知識や能力を活かしきれていない
  • コミュニケーションを自然に生まれる文化へ変えたい

御社では、誰と誰の間に”小さな接点”が必要ですか?

職場コミュニケーションにつながる「問い」を相談する 声かけ・共有・相談が生まれる問いを一緒に考える

「会話が少ない」というだけでなく、共有不足なのか、相談不足なのか、部署間連携なのか、孤立なのか。どこに小さな接点が必要なのかから整理し、問いを設計します。