専門誌『企業実務』掲載事例から考える/問い × 問いナッジ × 問い文化

答えを教える前に、
本人の頭を起動する。

人は、問われると少し考える。立ち止まり、思い出し、自分なりの答えを探す。その小さな「考えるきっかけ」が、職場を変える。

問いのある組織は、指示だけで動く組織とは違う。
考え、問い直し、対話し、選び直せる。

左:報告・数値・進捗・指示・承認はあるが誰も問い直していない「問いが少ない職場」、中央:「このやり方で、本当にいい?」という一つの問いが場の空気を変える瞬間、右:気づき・違和感・アイデア・対話・選択・行動が広がる「思考が動き始める」職場を示す3段階の図解

会議がスムーズだから、組織が考えているとは限らない。

産業医・川瀬氏は、会議や1on1の現場で、表面的には関係性も悪くなく、報連相も進んでいるのに、「思考」「迷い」「探求の余白」がなく、問いが存在しない状態への違和感をnoteで述べています。問いのある組織という考え方の、外部共鳴事例として紹介します。

  • 指示待ち
  • 形骸化した改善活動
  • 遠慮や自己検閲
  • 気づいている問題の放置

問いが失われた組織では、こうしたことが起きやすいと整理されています。

「発言がある」と「考えている」は違う。
「会話がある」と「問いがある」も違う。

会社が説明したからといって、本人の頭が動いたとは限らない。

よくある企業の流れ:

説明する
→
理解してもらう
→
覚えてもらう
→
実行してもらう

しかし、「理解した」と「自分で考えた」は別。

指示もっとムダを減らしてください。
→
問い今日、一つだけ減らせるムダは?

問いは、本人の中に”探索”を起こす。

問いの価値は、「回答」より前に始まっている。

問いには、次のような働きがあります。

注意を向ける記憶を探す違和感に気づく自分ごと化する考え始める選択肢を探す行動を想像する対話を始める

問いを見た瞬間に、すでに何かが起きている。

問いを見たとき、頭の中で起きること

1

注意が向く

今日、一つ減らせるムダは?

→ ムダに注意が向く。

↓
2

記憶を探す

最近、うまくいった共有は?

→ 過去の場面を思い出す。

↓
3

自分ごとになる

あなたなら、どうする?

→ 他人事から自分へ。

↓
4

選択肢を探す

今日、一つ試すなら?

→ 行動候補を考える。

↓
5

行動場面を想像する

どこで使えそう?

→ 実際の場面が浮かぶ。

問いは、意識の向きを変える小さな装置。

正解を渡されるより、自分で考えた方が当事者になりやすい。

川瀬氏のnoteでは、問いについて、次のような組織的な意味が整理され、問いを持つ文化が内省と学習を支えるとされています。

思考をひらく主体性を育てる関係性を深める

問いは、一人の思考だけでなく、組織の学習にも関わる。

変化に強い組織は、正解を持っている組織とは限らない。

変化が起きたとき、「今まで通りやる」だけではなく——

  • この方法でいいのか
  • そもそも何のためか
  • 顧客は本当にこれを求めているか
  • 今の目標は現場と合っているか
  • 他のやり方はないか

川瀬氏のnoteでも、問いがあることで現場が立ち止まり、考え、対話を始めることが組織変化の土台として述べられています。

問いのある組織は、「答えを知っている組織」ではなく、
必要なときに答えを問い直せる組織。

問いを出せる職場には、「正解じゃなくても言える余白」が必要。

例えば、次のような言葉を出せるか。

これでいいのかな
ちょっと違和感がある
よく分からない
別の方法があるかもしれない

川瀬氏のnoteでも、問いを発するには安心感が必要であり、問い・迷いを出せる関係性と心理的安全性の重要性が述べられています。

「問いを出せ」と言うだけでは、問い文化は生まれない。
問うことを歓迎する環境も必要。

7秒の問いでも、人の頭は少し動く。

問いというと、会議で深く考える、1on1で内省する、長時間対話する、哲学的な問いを扱う——というイメージがあります。それも大切です。しかし、問いは、毎回深くなくていい。

今日、一つ自分から動くなら?
今日、一人に声をかけるなら?
今日、一つ減らせるムダは?

のような問いでも、ほんの数秒、「自分なら何かな?」と考える。

深い問いが組織を問い直すなら、
小さな問いは日常を少し動かす。

深い問いと、小さな問い

深い問い

主な場面

  • 会議
  • 1on1
  • ワークショップ
  • 経営会議
  • 組織開発
  • 振り返り

例

そもそも、私たちは何のためにこの仕事をしている?

役割

  • 意味を問い直す
  • 対話を深める
  • 前提を疑う

小さな問い

主な場面

  • 出勤時
  • 退勤時
  • 研修後
  • 朝礼
  • 仕事の途中
  • 日常の数秒

例

今日、一つ良くするなら?

役割

  • 注意を向ける
  • 思い出す
  • 一つ選ぶ
  • 小さく動く

どちらか一方ではない。
深い問いと、小さな問いが日常にあることが「問いのある組織」をつくる。

ほんの一問が、「いつも通り」に小さく割り込む。

いつもの仕事
→
問い
→
数秒考える
→
何かに気づく
→
一つ選ぶ
→
また仕事へ

問いは、本人を大きく変えるための介入ではない。
注意や思考をほんの少し動かすマイクロインターベンションとして使える。

深い回答より、まず一度考えること。

問いナッジでは、次のような形でも成立します。

5択
短い選択肢
内緒
ノーコメント
匿名

なぜなら、会社が回答内容を知ることだけが目的ではないから。

本人が問いを見て、一瞬でもそのテーマを意識に上げる。
そこに価値がある。

問いなら、何でもいいわけではない。

詰問になりやすい問い

  • なぜできなかったの?
  • どうして分からないの?
  • 本当にやる気ある?
  • ちゃんと考えた?

→ 評価・防御・正解探しを生みやすい。

思考をひらく問い

  • 今日、一つ変えるなら?
  • 今できる小さな一歩は?
  • 誰かに相談するとしたら?
  • もう少し良くするとしたら?
  • 他のやり方があるとしたら?

→ 注意・探索・選択につながる。

問い文化は、「質問が多い職場」ではない。
人の思考がひらく問いがある職場。

問いで頭を起動し、ナッジで動きやすくする。

1

問い

注意・記憶・思考を起動する

↓
2

ナッジ

望ましい行動を選びやすい環境をつくる

↓
3

問いナッジ

問いと選択肢によって、気づき・思考・選択・小さな行動までを設計する

「問い」と「ナッジ」は別のもの。
それを組み合わせたのが問いナッジ。

いい問いを思いついたときだけ使うのではなく、日常に置く。

問いは、さまざまな場面に置けます。

会議1on1朝礼研修ポスターメールチャット出勤退勤

問い文化をつくるには、問いを個人技だけにしない。
必要な場面に問いが現れる仕組みをつくる。

出勤・退勤の数秒にも、問いは置ける。

その一つの実装手段が、スコキンなどの問いナッジです。

出勤時

  • 今日、一つ自分から動くなら?

退勤時

  • 今日は、自分から動けた瞬間は?

ただし、スコキンそのものが目的ではありません。

大切なのはツールではなく、職場の日常に「考えるきっかけ」が存在すること。紙、メール、会議、チャットでもよい。

全員が、問い手にも回答者にもなる。

経営

私たちは何を大切にする?

管理職

チームを一つ良くするなら?

社員

この仕事、もっと良くできない?

社員同士

他にできることある?

自分自身

今日、一つ変えるなら?

問い文化とは、問いが上から下へ流れる文化ではなく、
問いが職場の中を循環する文化。

「何を問おう?」と考えた瞬間、すでに職場を見始めている。

経営者・管理職
↓
現場リーダー
↓
社員

問いをつくる役割が広がっていくと、社員自身も、今の職場に何が必要か、何を意識した方がいいか、何を良くしたいかを考えることになる。

問いの作り手が増えることは、
職場について考える人が増えることでもある。

正解を守るだけではなく、必要なら問い直せる。

川瀬氏はnoteのまとめで、変化の激しい時代に強い組織を、問い続けられる組織として描き、問いが思考・関係性・主体性を深めると述べています。

問い
→
立ち止まる
→
考える
→
対話する
→
意味を問い直す
→
修正する
→
学習する

学習した先に、また新しい「問い」が生まれる。

問いは、組織が自分自身を更新するための基礎動作になる。

ただ疑問文にすればいいわけではない。

問いナッジでは、例えば次の9視点から問いを設計します。

焦点性

何に注意を向けるか。

答えやすさ

数秒でも反応できるか。

感情フック

少し心が動くか。

反復

日常で繰り返せるか。

自分ごと化

自分の仕事・行動として考えられるか。

小さな一歩

行動が大きすぎないか。

ユーモア

管理感を和らげられるか。

匿名安心

答えたくないことを守れるか。

対話誘発

人と人の会話につながる可能性があるか。

問いは短い。
でも、良い問いには設計がある。

何でも「問い返せばいい」わけではない。

  • 法令違反
  • ハラスメント
  • 重大な安全問題
  • 深刻な人員不足
  • 明確な判断が必要な危機
  • 経営側が決めるべきこと

まで社員へ問い返してはいけません。

明確に決めるべきことは決める。指示すべきことは指示する。
そのうえで、本人が考えた方がいい領域に問いを置く。

こんな企業に向いている

  • 指示待ちが多い
  • 「自分で考えて」と言い続けている
  • 会議で問いが出ない
  • 改善活動が形骸化している
  • 社員が職場課題を自分ごと化しない
  • 管理職ばかりが考えている
  • 研修後に本人の思考が続かない
  • 心理的安全性を対話へつなげたい
  • 問いを組織開発に活かしたい
  • 問い文化を職場に根づかせたい

御社では、社員に何を「考え始めて」ほしいですか?

職場に置く「問い」を相談する 問い文化のつくり方を相談する

答えを教える前に、何について気づき、考え、選んでほしいのか。御社の課題から、日常に置く問いを一緒に設計します。